研究課題/領域番号 |
11610428
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
渡辺 智恵美 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (40175104)
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研究分担者 |
米村 祥央 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (50332458)
菅井 裕子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (20250350)
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キーワード | 金銅製品 / 製作技法 / 材質 / 蛍光X線分析 / 耳環 |
研究概要 |
金属製品は土器や木製品とは異なり、材料の調達や製作方法に特別な生産体制が必要とされる遺物である。とくに金銅製品は金、銀などの特殊な材料や鍍金等の専門的技術を要し、個人や小単位の集団ごとに製作していたとは考えにくい。これら金属製品のうち、金銅製品に焦点を当て、(1)製作材料を科学的に分析すること(自然科学的調査)、(2)製作技法を解明することによって古墳から出土する遺物(飾り大刀、馬具、耳環等)の材料の入手経路や製品の流通、製作工人集団間の差異について明らかにすることを目的として調査を行った。科学的分析については、従来から行ってきた蛍光X線分析に加えて、材料の産地を特定できる鉛同位体比分析を行った。製作技法の解明については、実体顕微鏡による観察に加えて今年度(第一次年度)で購入したデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製)、X線マイクロアナライザー(堀場製作所製)を利用した。 最終年度である今年度は、これまで行ってきた自然科学的調査の結果に考古学的条件(古墳の年代や構成、出土遺物の組合せ等の諸要素)を加味して総合的に検討した。とくに昨年度より継続的に行っている愛媛県松山平野より出土した耳環点について、素材、製作技法、鉛同位体比分析結果と古墳の年代、共伴遺物などとの相関関係を詳細に調査した結果、近似した分析値を持つ耳環が異なる古墳群で出土していることや同じ材料や技法で製作されている遺物の存在することが確認できた。また鉛同位体比分析でC、C'領域に属する遺物が確認でき、これらの遺物は国産の銅を利用した可能性も考えられ、国産銅の使用開始時期についても再考する必要があると思われる。しかしこれについてはC、C'領域の銅の産地が日本以外に存在しないとは言い切れず、注意を要する。今後の課題としたい。
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