本年度は、基本的に収集したデータ、ならびに研究成果を取りまとめる作業を主としておこなった。 しかし、昨年度までに十分できなかったデータの収集も平行しておこなった。 今年度、集成作業をおこなったのは、(1)平城京条坊関係資料(2)平城宮で検出された土坑資料(3)飛鳥京跡発掘調査成果の集成、の3点である。(1)は昨年度までの補足作業としておこなったもので、都市の骨格となる条坊制の検討のためデータを収集した。(2)は都市での廃棄物処理の問題を検討すべく実施したもので、条坊制という方格地割が導入されることによって、廃棄物の処理方法がいかに変化するかという視点からデータを集めた。(3)はこれまで、約40年にわたって実施されてきた飛鳥京跡の発掘調査のデータ整理をおこなった。 都市の比較という視点から、佐賀県名護屋城(近世城郭)とその城下町の形成と消滅、沖縄県那覇市首里城跡を東アジアの中の王宮の比較という視点から資料調査、現地調査をおこなった。 成果物である報告書は、飛鳥がいかなる過程をへて都市を形成していくのか、また、それが藤原京にどのように継承されるのか、そして、平城京との比較という視点からまとめた。また、飛鳥京跡の基礎データの一覧表・地図を作成した。 なお、平城京における宅地の変遷にかかわる研究、廃棄物の処理方法が、飛鳥・藤原京、平城京でどのように変化しているのかという研究は、資料上の制約、方法論的な問題から、その成果を報告書に掲載することができなかった。また、全体的にみたとき、飛鳥・藤原京については、比較的まとまった成果が得られたが、平城京については、不十分な点が多々残ったことは否めない。これらは、今後の課題として、取り組み、近い将来、何らかのかたちで成果をまとめたい。
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