平成11年度はデーターベース用紙の様式決定および四国地方のデーターベース化、平成12年度は九州、中国地方および和歌山、滋賀、奈良県のデーターベース化、平成13年度は兵庫県、京都府のデーターベース化、平成14年度は大阪府のデーターベース化および研究成果報告書作成作業をおこなった。それらのデーターベース化作業の結果、西日本2府20県の約2000遺跡において形象埴輪を確認した。それらは公表されている資料を基にしているため、更に増えることが予想される。特に、大阪府450遺跡、奈良県390遺跡が群を抜いて多いことも分かった。それは百舌鳥、古市、馬見、佐紀盾列、大和・柳本という5大古墳群を抱えていることを反映しているのだろう。また、(1)西日本は近畿地方を核としているが、各地で地域色がみられ、それは近畿地方内部でもみられる点、特に、5世紀後半に近畿地方において顕著となる家形埴輪における分割成形・焼成技法および石見型埴輪が、近畿地方以外では必ずしもセットをなさず、かつ近畿地方内部でも濃淡がみられたり、北部九州および山陰地方において壺形埴輪が遅い時期まで用いられつづけたりする点などにみられる、(2)形象埴輪は円筒埴輪同様、大和東南部で創出された可能性が高い点、(3)古墳の規模が大きいほど形象埴輪を多くもつという広範囲にみられる階層性のほかに、長原古墳群や四条古墳群のように群集墳レベルで豊富な形象埴輪を保持するという特殊な例も多々みられるので、一般的な階層性のほかに、小地域レベルで特殊な階層が存在する可能性があり、単純ではなく複雑かつ重層的な古墳時代の社会構造が指摘できそうな点が成果として挙げられよう。ただし、今回は集成作業に多大な時間および費用を費やしてしまったため、必ずしも上記成果が反映されていない。今後順次発表していきたい。
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