抄物は、日本語研究資料として価値が高く、これを利用して多くの研究成果が上げられて来た。しかし、利用されている資料が、伝存すると見られる資料の九牛の一毛に過ぎないにもかかわらず、1980年代以降はその現物を発掘・調査している研究者がほとんどいなくなっている。本研究は、伝存する全抄物の目録を完成させて、抄物言語研究さらには日本語研究の大幅なる進展に資せんとするものである。 1、調査不十分な抄物と未調査の抄物の発掘・調査 (1)発掘・調査 お茶の水図書館・東京国立博物館・東京大学文学部・名古屋市立蓬左文庫・京都府立総合資料館・京都大学附属図書館・賀茂別雷神社三手文庫・天理大学附属天理図書館・阪本龍門文庫・神戸女子大学附属図書館・広島大学附属図書館・九州大学附属図書館・同医学部図書館・佐賀大学附属図書館・佐賀県立図書館などにおいて、抄物の発掘・調査につとめ、新資料を多く発見した。 (2)複写物の入手 そのうち主要な資料の複写物を入手した。 2、新資料の資料性の解明 お茶の水図書館・天理大学附属天理図書館吉田文庫などの資料の中には「〜抄」の名を持たず、特定の原典に対する注釈書でない新資料の抄物が多く、その撰者・成立・資料性の解明につとめた。 3、目録の作成 (1)パソコン入力 既に作成していた原典漢籍の部の手書き目録の一部についてパソコン入力を行った。 (2)新たに調査した資料の組み込み 目録の一部について、新たに調査した抄物を組み込んだ。
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