平成11年度には、全国市町村の650地点の教育委員会社会教育課あてに、「あいさつ表現儀礼」の『調査票』を送付し、回答を求めた。その結果、250地点について、回答を得ることができた。これにより、過去3年間のフィールドワークで収集した全国各都道府県での46地点と、先回の全国アンケート調査によって得られた181地点とを合計すると、総地点数は477地点になる。この地点数は、『方言文法全国地図』に次ぐ大規模なものとして高く評価される。 この調査では、100項目に亘る質問項目によって、土地のあいさつ儀礼体系が記述される。これらのデータを比較しつつ、都市化以前の村々でのコミュニケーションの実態や儀礼行為体系を明らかにしていくことができるものと考えている。 この調査の特色は、100項目に亘って、日本人の生活の中の種々なあいさつ表現を、対話形式で回答してもらっている点である。又、「あいさつ」という特定の領域に限定して、全国規模の地理言語学的調査研究を実施したものは、世界でもはじめてのことではないかと思われる。従来の多くの研究がword Geographyのレベルにとどまっていたからである。本研究が対話や文の形式を対象にする新しい領域の開発につとめることを通して、Geolinguisticsの世界に大きく貢献することが期待される。 平成12、13、14年度は、平成11年度の成果をふまえて、分析的研究を推進するとともに、全国地図の作成にとりかかるつもりである。その方法として、世界の研究者の共通の方法になろうとしているところのコンピュータを利用した言語地図の実用化にとり組みたいと考えているところである。
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