当該課題名に基づく平成12年度の研究成果は、以下の通りである。 1.通信調査の標本数を目標の500地点(500被調査者)にするために、三度目の通信調査を実行した。その結果、当初に予定した数字を超えて、505地点の資料が得られた。500地点を越えれば、調査地点として、地理学的な研究を実施するのに堪えられる水準に達したと考えられる。『フランス言語地図』は、650地点であった。少なすぎるようなのに、世界的で画期的な成果をあげている。したがって、日本全土で、505地点ならば、適当であると判断される。これらの言語データを基に、次年度以降の言語地図化に関する研究を行う。 2.ポーランドのルブリンにあるマリー・キューリー大学で、平成12年7月に第三回世界方言学者・地理言語学者国際会議が開催された。江端は全体会における専門分野での講演と分科会での司会とを頼まれた。過分な待遇を受けて恐縮した。依頼されたことは断らないようにし、全てを引き受け、一週間の責務を果たした。 講演におけるテーマは、"Geolinguistic Study on the Greeting Expressions and Behavior in Japan"である。質問もあった。ポーランドにも、同じ言語文化現象がありそうだということで、後に、協同研究が提案された。また、帰国後、アメリカの研究者が、方言文化の国際比較の観点から、来日され、学術交流が行われた。筆者のテーマが広大なので、色々な角度からのアクセスがあり、それらに対応している。 3.当該テーマに関して、別に、江端義夫編『全国あいさつ行動資料』(1999年)を作った。また、日本の学術雑誌の『社会言語科学』(2001-3)に拙文の掲載が許可された。ポーランドでの講演がそのまま、載ることになった。 本年度の成果は、全国あいさつ通信調査資料の完全収集と国際会議での学術交流の二点に集約される。
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