(1)本年度の研究の第一の成果は、ポーランドでの講演発表を日本のレフリー付きの研究雑誌、『社会言語科学』に投稿して採択され、一つの成果として定着を見たことである。先の国際会議でのプロシーディングヘの登載を主催者から希望されたけれども、断った。その代わりに日本で平成13年3月に発行される機関誌に掲載する方を選択した。発表後、これに対して、東大名誉教授の柴田武博士が高く評価してくださった。そして、『社会言語科学』誌上での研究論争が掲載されることにもなった。すなわち、柴田博士の言語地理学論と江端の地理言語学論とは真っ正面から、対立して、火花を散らす場が生まれることになった。有り難いことであった。かくして、日本で、地理言語学の方法論について咬み合った議論が成立したことは、学問の進展にとって、有意義であったと思われる。その点から見ても、日本の学会誌に発表して良かったと思っている。英文で書いてあるので、どこの国の機関誌に載ってもさしつかえなかったのだけれど、将来、『あいさつ表現儀礼全国地図』を刊行する段階になった時に、人々の期待が強く残っている方が歴史的意義も高いと考えて、敢えて、ポーランドでの刊行を止めて、日本での刊行に決断したのであった。 (2)数年来継続して、広島大学の学生に、故郷の「あいさつ表現」を記述し報告させてきている。今年も、調査した資料を一冊の本にとりまとめて、公表し、世間の財産にするように計画し、それを実行した。本の題名は『あいさつ表現習俗フィールド』である。200部印刷した。 (3)実地調査と通信調査を合計した全国507地点を確定し、全国版白地図を印刷し言語地図化の準備をした。 (4)欧米の先行する進歩的な大型の言語地図集を購入して世界水準の研究レベルを確認した。
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