研究概要 |
基本的な台帳として馬淵和夫監修『今昔物語集文節索引』(笠間書院,全28巻)を採用し,『今昔物語集』各巻の全語彙の使用度数をかぞえて,これをコンピューターに入力することから出発した。この頻度表は,古代語研究者にとって,大いに利用価値のあるデータベースとなるであろう。ただし,現在のところ,いちおう全巻のデータの入力はおわったが,完全な点検はすんでいない。 今昔物語の巻ごとに平均語数を集計すると,つぎのようになる。 異なり語数 延べ語数 天竺 2195.40 13304.00 震旦 2157.25 12802.25 本朝 2364.16 12687.42 これだけの表からでも,すでにある文体的な特徴をみることができる。すなわち巻の平均延べ語数は,天竺・震旦にくらべて本朝がすくない(すなわち,巻の長さがみじかい)にもかかわらず,平均異なり語数は本朝がもっとも多いのである。逆にいえば,天竺・震旦の部は,おなじ語のくりかえしが多い,といえる。 上位にある語は「言ふ」「その」「こと」「あり」など,一般的な用語で,ほかの作品とちがう点はすくない。ただし,天竺の部で「ほとけ」が第6位にあることは,説話としての特色をしめすものである。今後,この頻度表を使って,各巻および天竺、震旦、本朝それぞれに特徴的な語の抽出,各巻の語彙の類似度,語彙からみた文体差などの研究をする予定である。
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