明和九年書籍目録所載「奇談」書76点に関係する研究文献目録の作成、同「奇談」書翻刻資料の網羅的収集、研究書・研究論文の網羅的収集を行い、仮基本データ・べースを作成した。仮基本データとは、書名・巻冊・編著者・刊年・版元・翻刻・国書総目録および古典籍総合目録の所在情報、先行研究文献、日本古典文学大辞典の記述、水谷不倒『選択古書解題』の記述などである。この仮基本データ・べースから出発して、原本の書誌データ採取を行った。本年度は、国立国会図書館・都立中央図書館・国文学研究資料館・東京大学総合図書館・大阪府立図書館・西尾市教育委員会岩瀬文庫所蔵資料の調査を行い、書誌データを採取、また文献複写の上、資料収集を行った。これらの作業から次のような知見を得た。 明和九年刊書籍目録の「奇談」書においては書目に「談」「物語」「夜話」など<語り>を示すものがほとんどであるが、その内容も<語り>の枠組みをもつものが多い。また通例の文学史で「談義本」と言われているものが多くを占める。談義本の実態を明らかにするには「奇談」書の調査が欠かせないことが明らかになった。 また<語り>を示すものの中には「怪談」が少なくない。これは宝暦四年書籍目録に比べると格段に増加している。『西播怪談実記』『怪談御伽猿』『席上怪談』『怪談笈日記』『怪談直宿袋』『怪談実録』『怪談国土産』『怪談三鞆絵』『怪談御伽童』であり、このうち、明和五年刊の大江文坡作品が三つを占める。 版元に注目すると、大坂または汗戸の吉文字屋の関わるものが多い。『西播怪談実記』『世説麒麟談』『新選百物語』『近代百物語』『続可笑記』『たのしみ草』『今昔雑冥談』『そこさがし』『本朝国語』『不埒物語』がそれである。
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