昨年度は、研究課題に関わる研究文献目録の作成、「奇談」書翻刻資料の網羅的収集、研究書・研究論文の網羅的収集を行い、各書目に関する書名・巻冊・編著者・刊年・版元・翻刻・国書総目録および古典籍総合目録の所在情報、先行研究文献等のデータを収集し、原本の書誌データ採取を一部行った。本年度は、前年度に引き続き、「奇談」参考文献目録の補遺および文献の収集、翻刻資料・研究書・研究論文の収集をおこなった。また書誌データ採取を行い、前年度より構築しつつある奇談書基本データおよび原本所在仮データ・ベースの作成を行った。本年度のデータ採取は、東洋大学附属図書館・国立国会図書館・都立中央図書館・国文学研究資料館・お茶の水図書館・大阪府立図書館・九州大学附属図書館らで行った。 明和九年書籍目録所載「奇談」書の研究と関って、いくつかの課題が浮上してきた。第一に同書籍目録に多く「百物語」の書名があることに関連して〈百物語〉モノの文学史的意味を考えることができた。宝暦から明和にかけての〈百物語〉モノの流行には、〈百物語〉モノが実態としての百物語を反映せず、奇談・怪談の代名詞と化しており、短編説話集の構成法としてそれが百で終わる、終らないに関らず便利な方法であることが窺われる。第二に、「奇談」書が宇治拾遺物語などの中世説話の影響を強く受けていることが判明しつつあり、中世説話の受容・再構成という点から近世奇談を再考するという観点が出てきた。 なお「舌耕夜話」「名なし草」については翻字作業を進めている。また、奇談書の「語り」の問題と関連して、「長物がたりの系譜-春雨物語論のために-」を「江戸文学」第22号(平成13年2月、ぺりかん社刊)に発表した。
|