明和九年刊書籍目録所載「奇談」書76点の基本書誌データ作成を行った。国会図書館・天理大学附属図書館・早稲田大学附属図書館・筑波大学附属図書館・東京都立中央図書館・内閣文庫などの所蔵する文献を調査して補充し、一応現段階における可能な限りのデータ収集を終了し、『明和九年刊書籍目録所載「奇談」書の研究』(成果報告書)としてまとめた。報告書においては、これまで収集した、書誌データ・原本写真に基づき、各書目につき書名、書型・巻冊、編著者、刊年、板元、『割印帳』および『享保以後大阪出版書籍目録』における記述、概要、所見本書誌(詳細なデータを記載)・諸本などについて箇条書きにまとめた。従来の研究に負う所も少なくなかったが、網羅的な調査としてははじめてのものである。 また、これらの調査結果を元として考察したことを研究発表・講演・論文の形で公にした。研究発表としては、2001年12月15日に、京都近世文学研究会において、「明和九年刊書籍目録所載「奇談」書について」と題して、これら奇談書のデータを簡略にしたものを報告し、かついくつかの「奇談」書を取り上げて、その特徴や内容を紹介した。ついて、2002年1月12日に、大阪大学国語国文学会において、「近世奇談の<場>」と題して講演をした。この講演では、(1)「奇談」の意味、(2)「奇談」集編成のための場の設定、(3)談義の場、(4)咄の場などについて考えるところを述べた。論文としては、「語文」78号(2002年6月刊行予定。大阪大学国語国文学会誌)に「「奇談」の場」と題して、講演の内容を元にまとめた。さらに、奇談書における宝暦五年の意味を考察する「談義本史の-齣-宝暦五年の談義本管見-」を現在、執筆中である。 今後は、「奇談」作者および板元(その両者を兼ねるものもあるが)について追求し、より深めた形で研究を継続していく予定である。
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