本研究は、古代日本文学における漢語の受容の実態を、倭歌と日本漢詩の双方について、比較文学的手法を用いて解明することを目指して行われた。 平成11年度は『文選』李善注の語釈部分のカード化と並行して萬葉集の用字法をめぐって本文の整理と分析を行った。平成12〜13年度は李善注語釈部分のカード化に中心をおき、平成14年度は索引完成を目指してカードの整理と原稿作成を行った。報告書には「文選李善注語釈索引(稿)」を収録している(未完)。なお、平成14年度は索引の作成と並行して、 1、古代日本語の「白」の訓に関する意味の分析 2、萬葉集巻二十の防人歌群の編纂実態の解明 3、大伴池主の漢詩と倭歌の作風についての考察 を行った。当初計画した漢語の受容の実態の解明については、いまだ十分な成果が挙げられていないが、索引完結の後には、古代日本文学の漢字使用のありようをめぐる考察が展開される予定である。
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