出版禁令の存在のために、作者が行っている自主規制やカムフラージュの実態を解明すべく、仮名草子や浮世草子の諸作品の検討を継続しているが、その成果の一部を「西鶴の自主規制とカムフラージュ-『好色一代女』の揶揄と諷刺-」「西鶴の自主規制とカムフラージュ-『武道伝来記』の戦略」として発表した。また、江本裕氏との共著『西鶴のおもしろさ-名篇を読む。』においても、その成果を生かしている。なお、「西鶴のカムフラージュと諷喩-「天下にさはり候」ことども-」は、本年5月に刊行予定のものであるが、そこでは西鶴の俳階や『好色一代男』を中心としてとりあげ、西鶴の自主規制のありようや諷喩の姿勢を論じた。仮名草子については、主として「和本の軍書類」についての検討を行っているが、今年度中に研究成果としての報告を行ってはいない。しかし、近年中に報告が可能と思われる材料や論点が若干ながら集まりつつあるので、より詳細な検討を続けて行きたいと思っている。なお、本研究課題と直接の関係はないが、共著者の一人として『好色一代男』を分担、自立語索引を付した『新編西鶴全集』第一巻本文篇・索引編を刊行し、『同』第2巻の刊行に向けての作業を継続中である。
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