出版禁令の存在のために、作者や諸肆が行ってる自主規制やカムフラージュの実態を解明すべく、仮名草子や浮世草子諸作品の検討を継続して来た。平成11年11月には、拙著『近世文芸への視座』第一部においてこの問題をとりあげ、仮名草子の一部、西村本浮世草子の一部、西鶴の転換期の諸作などを取りあげて上記の問題を論じた。また、平成11年3月の「自主規制とカムフラージュ『男色大鑑』と『武道伝来記』の差異」(早大文研紀要44)以後も、「西鶴のカムフラージュと調喩」(江戸文学23号、平成13年6月)までには、西鶴の『一代男』から『日本永代蔵』への過程にある諸作を論じた「西鶴の自主規制とカムフラージュ」(国語展望、105〜108巻)を発表した。また、仮名草子に関しては、新編日本文学全集『仮名草子集』(平成11年8月)の解説及び同書頭注において、研究の成果を一部取り入れている。が、仮名草子関係のものの多くは、研究途上の感があり、論文として公表する状態にまでは至っていないので、今後を期することとしたい。また、西鶴関係においても触れるべき作品が残っているので、近年中には、既発表のものを改訂して取り入れ、一書にまとめたいと考えている。
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