本年度は、課題遂行の最終年次にあたる。「軍事制度下の文学」との観点から、一九四〇年代後半の文学に対した全体性を求め、研究発表「「戦後」文学の基盤形成」(02年10月日本近代文学会秋季大会)の他、以下の個別的な作業を行った。平成14年度科研交付申請書「研究目的」の細分化項目に概ね従い、研究実績を報告する。 A:短期渡米調査 02年9月二週間余り、ワシントンD.C.米国議会図書館所蔵資料の文献を調査した。旧内務省検閲原典を数百点余りを確認し、必要文献を複写した。 B:在米資料の論文化 別項の各論において、戦時期の官辺資料から制度的な側面の解明を求め、未発表資料の紹介に努めた。 C:拙著の限界性を踏まえた批判的な再論化 「敗戦期文学の論拠は、GHQ/SCAP関連資料(同在米資料.同押収返還資料・同検閲資料)である。プランゲ文庫資料や国立国会図書館憲政資料室資料がデータベース化され、今後、同様の観点に拠る事例研究などの進展が期待される。拙著の刊行時、それらは手作業による復元段階にあった。拙著には、そのような限界性がある。また、幾度かの短期渡米調査によっても、その実際を踏査し得ない同在米資料が一部ある。逆に、七〇年代以降の研究動向を他方に、現状を明確にすることで、未達の領域を線引きしたと考える。 D:文献調査対象項目及び施設の拡大 C項目に関連し、03年2月八木書店が目録化した米国議会図書館所蔵古典籍は、この観点に重複する(その主担者や編集者から前後の事情を伺った)。直接的な成果ではないが、幅広い観点から対象化し、このことで、より大きな潜在的な可能性を手繰り寄せたと考える。 E:<敗戦期文学試論>の論文化 当該領域は、資料的な系統性が確立しつつある。その概略や、研究史の動向を踏まえ、作品の底辺(不可視的な性格)から論文化することに努めた。
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