本年度、鹿倉は「近世歌謡と狂歌-天明期を中心に-」(平成十二年度日本近世文学会春季大会・六月二五日・於東京大学)にて、「歌謡詞章」と当時の短詩文藝である「狂歌作者」、その延長線上にある「戯作者」に、どのように親しまれたのか論じた。一方、豊澤は「読書テクノロジーの変容と読書教育」(日本読書学会)を発表、テキストを読む事の変容についての考察を深めつつある。本年度の研究代表者(鹿倉)・分担者(豊澤)の主要な業績は、次ページに記した。 また、本年度の作業の具体的進展は、昨年度入力済みの「常盤友系」の諸本に加え、新たに『おぎ江節正本集』(国立国会図書館蔵)『哥撰集』(東京都立中央図書館蔵)のプレーン・テキスト.・データ(コンピュータ利用)を作成したことである。 猶、今回は「東アジア」における「民族音楽」の教育にも着目し、中国上海にて海外調査を行った。鹿倉・豊澤は上海研究調査において、まず、詞章についての語学的研究の一環として、中国の語学研究における詞章の資料的価値について、出版刊行物を中心に概観し、関連資料を入手した。加えて、「語文」等における扱いの状況を教科書などの刊行物によって確認できた。 さらに、豊澤は自身の専門領域の「古辞書研究」について、中国における動向を出版刊行物をもとに調査し、加えて中等・高等教育における教材としての展開も把握した。また個別的には日本の中学校教材として定番となっている「故郷」の著者・魯迅の中国における研究動向を確認し、最近の研究論文・刊行物を入手した。 来年度は、中国での「語文」(日本における「国語」)の現在の教育・研究状況を参考にしつつ、「歌謡詞章」のテキストの翻刻・整理を進める予定である。
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