本年度、鹿倉はまず「音曲と戯作-潮来節と江戸戯作」(『國文学-特集:近世のネットワーク』13年6月・学燈社)において「江戸長唄」にも取り込まれた俗謡「潮来節」と当時の文藝である「江戸戯作」との関連性について論じた。また、「花がたみと黒髪と…」(『日本文学』平成13年6月)では「謡曲」と「メリヤス」の詞章を対比しつつ、女性の「黒髪」の歌謡におけるイメージについて考察している。さらに、近世の出版における異版などの問題を論じた「重版・異版そして偽版」(『日本文学』平成14年2月)がある。一方、豊澤は「情報活用能力と評論・論説の読み」(『月間国語教育』通巻251号)などにおいて「読み」の能力の変容についての考察を深めてきた。本年度の研究代表者(鹿倉)・分担者(豊澤)の主要な業績は、次ページに記した。 また、本年度の作業の具体的成果は、明和年間『常盤友』を国立音楽大学所蔵「竹内道敬寄託文庫」を底本に、これまでの翻刻の誤りを是正し、章句索引を作成した。『めりやす豊年蔵』(東京都立中央図書館)『おぎ江節正本集』(国立国会図書館蔵)『哥撰集』(東京都立中央図書館蔵)などに収められるテキストも入っており、特に明和初期の流行歌謡の「詞章研究」は重要であると考えたからである。それ故、本年度「最終研究成果報告書」は『常盤友』のテキスト分析に主眼をおいた。但し、これは終わりではなく、「近世歌謡詞章研究」の始まりなのである。
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