平成12年度は、二年間にわたる調査・研究のとりまとめを行うべく、文献調査の結果を整理し、そこから得られた知見・結果を検討して更に調査を重ね、ジャンルの垣根を越えながら討議し、考究した。歴史的には、後堀河・四条の時代、後嵯峨院の時代、伏見院から南北朝、という、『平家物語』が生成される過程のエポック的な時代-これらはそのまま勅撰集が編纂され歌壇が活況を呈した時代と重なる-、この3つの時代を和歌と軍記文学の双方から広く捉え直すことを意図すると共に、文献調査の成果として、未紹介の資料を積極的に発掘し、紹介・解説することに努めた。また戦乱・政争などに敗れた者たちの「隠遁」という視点からも考えようと試みた。 和歌文学関係に関しては、新古今時代から後嵯峨院時代にかけての和歌資料、及び承久の乱前後の諸史料、後鳥羽院関係の資料の収集に努めた。また軍記文学関係では、『平家物語』の諸本、特に延慶本、長門本を中心に収集調査した。印刷物以外の写本・文書類は、国文学研究資料館・宮内庁書陵部・東大史料編纂所、その他で、マイクロフィルム・紙焼写真・複写による収集を行った。分担は、和歌とその周辺資料を田渕、『平家物語』とその周辺資料を櫻井が担当した。かつ隠岐などへ実地調査へ赴き、資料の調査にあたった。 これらの資料の整理、及び論文作成のために、田渕・櫻井ともにパソコンを用いて、資料・文献の整理・論文作成にあたり、複写資料によって解析を進め、また平行して、それらの解読・分析・意見交換を行い、敗者の文学とその表現、文化史的歴史的背景について、いくつかの視点から集約することに努めた。 こうした調査・検討・討議・論究の結果は、別記のような、いくつかの論文、翻刻と解説、研究書の一部に結実した。
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