研究概要 |
本研究は、中国唐代および宋代を中心に、詩を文人間の情報伝達のメディアとして位置づけつつ、その受容・交換のあり方を解明するとともに、それに関連して生じた詩学認識の変遷について検討を加えることを目的とするものである。本年度は、過去三年間の研究を踏まえて、主として次の四点からなる研究を行った。 1,宋代における詩文集の編纂とそこにあらわれた文学観に関する研究。特に、編年、および分類形式による詩文集編纂の実態について検討するとともに、それぞれの背後に存在する文学観の検討を行った。 2,宋代における詩文集の注釈に関する研究。上記1の研究と連動する形で、詩文集に付された注釈の実態について検討した。具体的には、南宋の王十朋編と伝えられる『集百家注分類東坡先生詩』を中心に検討した。 3,北宋末・南宋初期における江西詩派に関する研究。上記2の研究と連動する形で、『集百家注分類東披先生詩』に収められる江西詩派の成員の手になる注釈の特質を検討するとともに、同書の編纂・流布と江西詩派の形成に関する社会文化論的な考察を加えた。 4,楊万里とその詩集の編纂・流通に関する研究。上記1の研究を踏まえたケーススタディーとして、南宋の詩人楊万里をとりあげて検討した。 以上の研究も含めて、四年間にわたる本研究の成果は、これまで論文や学会発表等の形で公表してきたが、それとは別に冊子体の報告書として公刊される。
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