中国語話者の理解語彙と使用語彙という言語の二つの層について、一定の単語が一定の言語獲得段階において理解語彙であるか、使用語彙であるかについて調査・分析を行った。 本年度は主に分析・考察の対象となる材料の収集・整理を行った。言語材料としては、使用語彙については中国(北京市内)の小学生(1年〜6年)の作文を使い、理解語彙については、中国の小学校で使用されている各教科(国語、算数、理科、社会)の教科書を使用した。作文については手書き原稿約40万字のデータを計算機に入力し、小学生作文コーパスを構築した。教科書(簡体字版)の入力作業は完了した。 予備的な分析として、作文コーパスから1年生〜3年生のデータをサンプリングして、単語の単位を「現代漢語詞典」(修訂版)に基づいて分節し、使用語彙についての調査を行った。その結果以下の諸点が観察された。 1.感情を表出する語彙(副詞の「可」、形容詞の「開心」など)が多用される。 2.多義語の動詞「打」の用法に拡張が見られる。例えば、「打電脳」(コンピュータを操作する)など。 3.構造助詞の「地」を「的」と混同した使用例が多く見られる。 4.目的語提前の前置詞「把」の代わりに「給」、場所提示の前置詞「在」の代わりに「跟」といった北京方言の使用例が散見された。
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