本研究の目的は、1960年代以降の現代アメリカ演劇の諸相を比較文化的に4年間の期間で明らかにすることにある。3年目に当たる平成13年度は、基礎資料収集を昨年度に続いて行なった。その一方で、2001年9月のアメリカ合衆国における同時多発テロ事件のために、10月の渡米はあわただしいものとなり、研究についてのレビューを受けるというよりも、今後の同国における演劇研究のあり方そのものについての興味深い話を、本研究の指導的立場にあるニューヨーク大学のリチャード・シェクナー教授その他からいろいろと聞くことができた。その結果、さらなる資料収集と同時に、国内の演劇研究者との連携をどのようにとってゆくかという同時代的課題も浮上し、京都造形芸術大学に創設された舞台芸術研究センターにおいて、周辺領域の研究者や実践化とのミーティングを持ち、今後の研究の進め方について、さまざまな示唆をいただくことにもなった。今年度の研究成果といえるものは、まずだいいちに「グローバリゼーション」という歴史過程のもと、アメリカの現代演劇と日本の現代演劇の比較研究を進めることが中心課題として認識され、さらには、アメリカの現代演劇の日本への紹介、あるいは日本における演劇研究・批評の水準を国際的なものへと引き上げる、というような課題が視野に入ってきた。そのため、そのようなテーマで、雑誌に論文を計4本執筆して発表することになった。もちろん、ヨーロッパとアジアの現代演劇との連携という問題はまだ大きな課題として残されており、本研究の最終年度に当たる次年度は、そうした方向で、周辺領域の研究者との連携にとどまらず、資料の収集を積極的に行い、当該研究の成果としての著書執筆へと、研究をより具体化させてゆきたい。
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