過去2年間の研究はヴァージニア会社及び植民がいかに宗教とは無縁の商業的なものであったかであったが、最終年度の平成13年度はヴァージニア植民を擁護した説教を取り上げ、いかなる手法によって彼らは説教を行っていたか、いかに彼らが植民をとらえていたか、を明らかにした。「福音の普及」をヴァージニア植民の主要な目的とした説教家達が取った説教方法は聖書の一部をヴァージニア植民に適応するというものであった。聖書から他国に移動する箇所等を取り上げ、それをヴァージニア植民に適応する方法である。ダンを始めヴァージニア植民を擁護した説敬家達はすべてこの手法により、ヴァージニア植民を聖書を盾に支持している。最終年度研究のもう一つの大きな課題はこの聖書の適応がいかなる考えに由来しているかであった研究の結果以下のことが明らかになった。つまり説教家達が依拠した聖書の適応は元々は聖書解釈の一つである予型論(タイポロジー)に由来しているということである。予型論は「旧約聖書」と「新約聖書」の統一性を目指す解釈方法で、「新約聖書」に記されていることはすべて「旧約聖書」に予め示されていると考える。「旧約聖書」を予型、「新約聖書」を対型とする聖書解釈である。ところが17世紀ではこの予型論が世俗化され、本来ならば「旧約聖書」の対型を『新約聖書」に見出すべきでもあるが、その対型を17世紀の人物、事件に見出したのである。このような予型論の世俗版がダンを始めとする説教家達の手法であり、彼らはヴァージニア植民を「旧約聖書」の対型としたのである。彼らの聖書のヴァージニア植民への適応により、ヴァージニア植民関係者はいわば聖書からお墨付きをもらったことになり、彼らの行動は神から保証されることになる。以上の問題点を平成13年度に解明した。
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