研究分担者 |
小林 潤司 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 助教授 (10258676)
尾崎 寔 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (30077276)
市川 真理子 東北大学, 言語文化部, 助教授 (80142785)
藤田 実 関西大学, 文学部, 教授 (40029658)
下館 和巳 東北学院大学, 教養学部, 教授 (50179008)
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研究概要 |
グローブ座で演じられた劇に絞り,エリザベス朝演劇の初演の形態(origiral staging)を,ト書き研究にローズ座・グローブ座の考古学的証拠を接合して分析した。劇のテクストを広く精査し,ト書きを中心に文献上の資料を広く拾いあつめた.さらに,1996年に開場した新グローブでの実際的な知見を活用して,劇場構造が上演にどのような制限を課し,どのような特徴を与えたかを調査した.具体的に次の6点が明らかになった. (1)舞台上の二本の柱の上演への影響 二本の柱は左右対称性をつくり出し,本来は別の場所で起きている出来事が,舞台の左半分と右半分で同時に演じられた例が多くみつかった.また柱と舞台の縁との間を演技空間として用いた可能性もある. (2)登退場のト書きの曖昧さ シェイクスピア時代の俳優たちは「舞台裏への登場」をすることができたし,「舞台上に留まったままの退場」も'Exit aslde'などのようにあり得た. (3)上舞台と中央開口部の場面転換への利用 『ヨークシャーの悲劇』で死骸があるはずの舞台で,別の場面が演じられることがあるが,こうした時に上舞台を利用した可能性は一般に思われているようも少ない.むしろ,舞台の奥行きを利用して,舞台前面と奥(中央開口部もふくむ)を,観客が主観的に分節して,別の空間としてみなしたと仮説できる. (4)再建グローブ座から推測される演技の方向性 再建されたグローブ座では.囁いても叫んでもせりふがよく通ることが分かった.また手工間にいる観客との濃密な交感により,<場のスピリット>に触発された演技が,大いに用いられた可能性があると推測された.
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