予算の関係上大容量のパーソナルコンピュータ購入は12年度に延ばし、11年度には現有機器の周辺機具整備、古英詩関係の書籍史料購入、それらを用いてこれまでに作成した古英語関係の電子テキスト類に付加情報を組み込む作業、英語辞書における古英詩の引用箇所一覧表の作成を行った。具体的な成果としては以下のものがある。1)当該研究者が以前に作成した古英語頭韻詩Beowulfの電子テキストに、日本語訳文の情報を加え、文体・統語研究に有用な電子テキストを作成した。2)The Oxford English Dictionaryの古英詩Beowulfからの引用がある見出し語一覧表を作成し、これをもとに行順・単語アルファベット順の引用リストを試作した。3)Clark Hall編纂の古英語辞書を電子テキスト化し、Beowulfへの言及のある見出し語一覧表を試作した。4)これらの作業過程で得られた知見をもとに、「The Oxford English Dictionaryに見られる古英詩からの引用」という論文を書き、『言語文化研究』に印刷発表した。 上記の成果は、当該研究者が担当する大阪大学大学院言語文化研究科の講義、広域言語資料分析研究演習の資料としても有効に使用された。また本研究課題に関連することであるが、平成11年度より日本中世英語英文学会の機関誌編集委員(古英語担当)、及び12年より同学会評議員に任命された。 これらの資料を用いて古英詩の定型表現と比喩表現を再調査した結果は、平成12年度の日本中世英語英文学会第16回全国大会のシンポジウム(司会及び講師)で発表する。また同年度のコペンハーゲン大学で開催される第10回国際辞書学会において、古英語同意語辞典の古英語研究への利用方法について発表予定である。
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