本研究は、イギリス中世英文学における最高の宗教詩で、1377年頃の作とされる頭韻詩William Langland : Piers Plowman (B-text)(約7300行)を取り上げ、その音韻、形態、語彙、統語法、文体の諸相を詳細に分析・記述し、難解なことで知られるLanglandの言語の全貌を明らかにすることをめざすものである。併せて、他の2種のテキスト、A-text(約2500行)及びB-text(約7300行)の言語との比較研究を行い、3種のテキストが同一作者のものかどうかという20世紀初頭以来行われてきた論争の当否を言語・文体の観点から再検討としようとするものである。最終年度にあたる本年度は、主として次のようなことを行った。 1.Piers Plowman (B-text)の言語・文体分析のためのテキストの精読とデータ収集を引き続きおこなった。 2.上記データのうち、分詞、動名詞、不定詞の全用例の収集・分析を終了し、それらの用法の実態を詳細に記述した100頁を超える英文モノグラフをまとめた。 3.中英語頭韻詩関係の研究文献の収集を幅広く行った。そのうち、わが国の重要な文献に関しては、1900年以降2000年までの100年間にわが国でおこなわれた英語学研究を回顧した著書『わが国の英語学100年-回顧と展望』(平成13年5月刊)の中で批評・紹介した。 本研究は、その計画が最終的に終了するまでは更に数年を要すると思われるが、今後も研究を続行したいと考えている。
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