本研究は、イギリス中世英文学における最高の宗教詩で、1377年頃の作とされる頭韻詩William Langland : Piers Plowman(B-text)(約7200行)を取り上げ、その音韻、形態、語彙、統語法、文体の諸相を詳細に分析・記述し、難解なことで知られるLanglandの言語の全貌を明らかにすることをめざすものである。併せて、他の2種のテキスト、A-text(約2500行)及びC-text(約7300行)の言語との比較研究を行い、3種のテキストが同一作者のものかどうかという20世紀初頭以来行われてきた論争の当否を言語・文体の観点から再検討としようとするものである。当該期間に行った研究の成果は次の通りである。 1.過去100年に於ける内外の研究文献を収集し、そのうちわが国の研究に関しては著書『わが国の英語学100年-回顧と展望』(南雲堂、2001)の中に解題を付して記録した。 2.Piers Plowman(B-text)V.379'This shewynge shrift'の中のshewyngeは従来考えられているような現在分詞ではなくて、shirftを目的語とする動名詞であることを統語法の観点から主張した。(海外の国際学術誌に発表) 3.本研究の中心をなす統語・文体研究に関しては、データの分析が終了した分詞、動名詞、不定詞に関して、歴史的視点からPiers plowmanにおける用法を詳細に記述した。(英文モノグラフ) 本研究は、その全計画が終了するまでに更に数年を要すると思われるが、今後も研究を継続したいと考えている。
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