研究概要 |
本年度は、ミニマリストプログラム、言語獲得関連の各種研究会に参加して、多くの資料収集を行うと共に、成果の一部を、『英語青年』の海外新潮に関連原稿を4回執筆した。特に、「生成文法と第二言語獲得研究」では、本研究の基本的な枠組みである生成文法に基づく第二言語獲得研究の紹介をした。 本年度の調査では、昨年度扱った非対格動詞が引き起こす受動文の誤りをさらに検討した。第二言語学習者の誤りを検討すると、appear,take place,happenなどの完結性(telic)を示す非対格動詞に誤りが多いが、非完結性(atelic)な非対格動詞であるlive,existなどは、受動文の誤りが少ないことが判明した。また、文法性判断テストでも、類似の結果がでた。この結果は、非対格動詞には段階性があるという、最近の類型論研究の成果とも一致する。さらに、第二言語獲得者の非対格動詞の誤りを、全てNP移動規則の過剰生成とする説が不十分であることを示している。来年度は、理論的な観点から、非対格動詞の誤りをさらに検討する。 空前置詞現象に関しては、従来指摘されていた構文よりも広範囲に見られることが判明した。来年度は、各種データを理論面から検討する。 否定証拠に関する資料も数多く収集して、検討を行った。否定証拠の有効性に関しては、現在までのところ相反する仮説が提案されている。予備実験では、非対格動詞、難易度構文、受動文などに関する否定証拠を与えることで、その影響を探っているが、決定的な結論には到っていない。これは、否定証拠の中味、与え方など多くの問題が内在するからである。来年度は、肯定証拠、否定証拠に関する最終実験を行う予定である。
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