研究概要 |
3年間に亘る本研究の最終年にあたる2001年は、「暴力」「出版」「結婚」という三つのテーマに焦点をしぼり、イギリス・ルネサンスの男性作家による女性主体の表象と比較することにより、Lady Mary Wrothが描いた女性の主体構築の文化的意味を考察した。 「暴力」に関しては、2001年(平成13年)4月、ヴァレンシアで行われた第7回「世界シェイクスピア学会大会」のセミナーにおいて、Wrothと男性作家による「復讐」の表象を比べる論文、'Women and Revenge in English Renaissance Drama'を発表した。 「出版」については、2001年5月、第73回日本英文学会シンポジウム「イギリス・ルネサンスにおける出版と文化」において、論文「イギリス・ルネサンスの女性作家と出版」を発表した。本論文ではMary Wrothと、同じ社会階級出身の男性作家とが直面した出版事情を比較し、当時の出版文化とgenderの関わりを考察した。 次いで「結婚」については、共編著の『ゴルディオスの絆:結婚のディスコースとイギリス・ルネサンス演劇』(松柏社、近刊)を完成させ、拙論「結婚のディスコースと女性の主体、男性の暴力-女性作家・男性作家の場合」を収めた。イギリス・ルネサンス演劇において女性に加えられる暴力の表象の文化的意味を論じた本論文は、内容を発展させた形で近刊の著書Women, Violence and English Renaissance Literature(Linda Woodbridge編、New York : Medieval & Renaissance Texts & Studies)に収められている。 この3年間の科学研究費補助金によって行った研究の成果は、国内的にも国際的にも充分にあげられたと確信している。2002年8月にイギリスで開かれるシェイクスピア国際学会に招聘され、Plenary Sessionで発表する拙論も、またイギリスの出版社Palgrave社から出版される予定の拙著(英語による)も、この研究を基盤としている。
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