本年度は一昨年科研費申請書に記した研究計画のうち、メルヴィル原著の『白鯨』の翻訳を完成させた。来年度の上半期には公表できる予定である。本研究に付随し、海外出張を申請し、許可された結果、11月にヨーロッパ・キリスト教旧教圏およびユダヤ教圏を現地視察することを得た。キリスト教新教イデオロギーに貫かれた原著ではあるが、その対立イデオロギーと対比する点において益するところ計り知れぬものがあり、本科研費補助費の旅費支出を徳とし、大いに感謝したい。また、本研究の途上の成果として、週間朝日百科「世界の文学第33巻」に『白鯨』の項目を執筆、公表した。 研究計画の別項目である、明治文学と米国清教徒主義とジェンダーについては、これも研究に付随し、4度にわたる国内出張を認められ、神益するところ大であった。本研究の実績に関しては、印刷の形ではないが、講演という形で英語にて米国スミス大学東アジア学科で年度末に公表する予定である(本実績報告書執筆段階では予定である)。「Christian Ideals and 3 Japnese Thinkers」および「Three Writers of Early Japanese Modern Literature」がその論題である。帰国後、活字化する予定である。 また、別項目である現代アメリカ女性作家研究に関しては、アメリカ文化のうちの黒人女性音楽家へのアプローチを試みる段階であり、まだ報告できるほどの実績はないのが偽らざる現状である。
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