研究概要 |
今年度は研究計画の二年目(最終年)に当たる.研究遂行のための設備備品・消耗品としてOED2onCD-ROMの他、電子化された資料集成ICAME Collection of English Language,Project Gutenbergを買い、他方、研究代表者と同分野の研究者がいる大阪市立大学、愛知県立大学、名古屋大学へ出張し、情報交換と資料収集を行った。これらを活用して、次の三点の研究成果をあげることが出来た(発表順)。 1 論文「準助動詞have toの成立にみられる文法化」本来所有を表わす本動詞haveがとる構文の一つに古英語当初からI have something to sayがあり、さらにこの構文の異形の一つにI have to say somethingがあった。この異形から1400年頃までに、SVO語順の確立に伴い、準助動詞have toが発達したことを、主としてOED2onCD-ROMから収集した用例に基づいて実証的に論じた。この論文は秋元実治編『文法化-研究と課題-』(平成13年5月出版予定、英潮社)に収録されることになっている(初校済み)。 2 論文"An Aspect of the Development of Negative Sentences in Modern English"ほぼ否定命令文に限られる助動詞doとbe,haveとの共起が、これまで学界で指摘されてきたよりも半世紀以上早いことを、昨年度購入したEnglish Prose Drama on CD-ROMから収集した多数の用例に基づいて主張した。第11回歴史英語学国際会議(University of Santiago de Compostela,Spain;2000.9 10)で口頭発表した。 3 著書『英語史』を出版した。英語の先史、英語の成立と発達の背景、借用語、文字と音声、形態論、統語論の6章に分けて英語の全史を概説したが、最後の統語論の章のとくに迂言的do、否定構造を扱った二つの節では本研究の成果を効果的に利用することが出来た。
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