13世紀に書かれたと考えられる尼僧のための手引き書Ancrene Wisseは全部で17の写本が現存しており、英語、フランス語、ラテン語の言語で書かれている。これらの写本間の異同をコンピュータへ入力する作業を継続しながら、系統図を分析する際、重要となる当時の政治、文化、宗教などの社会背景についての情報を得るために必要な資料やマイクロフィルムを国内外で収集した。平成12年8月には、スコットランドのアバディーン大学で開催されたスコティッシュ・ゲーリック学会に出席、宗教文学の学者たちと有意義なディスカッションをすることができた。この学会の合間をぬってアバディーン大学図書館で写本調査も行った。その他、今年度、イングランドでは大英図書館、ケンブリッジ大学図書館、オックスフォード図書館の写本室で研究調査を進めた。米国カリフォルニア大学バークレーの図書館でも資料調査をすることができた。 また、イギリスで刊行されることが決定したA Companion to Ancrene Wisseの編集会議を8月イギリス滞在中に行った。これに加えて、国内で出版が決まっているA Book of Ancrene Wisseの本の編集作業を行った。 本年度Early English Text Societyから遂に刊行されたArne Zettersten編The English Text of the Ancrene Riwle(Vernon写本)のIntroductionに、Ancrene Wisse系統図についての私の見解が紹介されていることを最後に付け加えておきたい。
|