研究概要 |
語彙拡散理論と生物変化理論の類似性を,英語の史的発達からのデータに基づき,脳の進化と言語変化の共進化(brain-language coevolution)の観点から,1.語義変化,2.統語変化,3.音韻変化について考察した。 1に関しては,神経ネットワーク(neural network)を用いて,語義表象と概念の単なる関係から,概念と概念の関係を表わす統語法への出現の経路を明らかにした。その過程の中で,全体論的な意味から,語が出現し,語が追加されたり,削除されたりする動的なシステムを構築した。 2に関しては,神経ネットワークを用いて,中央埋め込み文により生ずる回帰的非整合性が,言語の習得に直接的に影響を及ぼすことを示した。中央埋め込み文は,記憶という観点からは,理解することが困難なため,必然的に避けられ,これにより語順の出現,発達は決定されることを明らかにした。 3に関しては,進化計量法(genetic algorithm)を用いて,音と音の間の知覚的距離を出来るだけ遠くする制約と,発音のし易さという生成的制約に適合しながら,ランダムな状態から,母音体系がどのように出現したかを明らかにした。更にDE,MEの低母音の音価も予測出来ることを示し,体系内に於る低母音の競合という興味深い結果もシミュレーションにより得られた。
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