1 前年度にブリュッセルの文化省や劇場において行なったベルギーの舞台芸術政策の現状についての聞き取り調査の結果を整理・検討し、それを神戸大学国際文化学会公開シンポジウム「世界の芸術文化環境と地域社会」において報告した。また、「芸術文化政策の国際比較研究」の一環として論文にまとめ発表した。 2 連邦体制におけるベルギーの言語法について調査・検討し、その部を翻訳紹介・解説することで、多言語国家の言語文化的アイデンティティを探る一助とした。 3 メーテルランクの戯曲と並んで、世紀末ベルギー象徴派を代表する小説『死都ブリュージュ』を書いた作家ローデンバックについて、資料の検討やテクスト分析を行ない、またこの小説をもとに創作されたオーストリア人作曲家コルンゴルトのオペラ『死の都』や、映画、文学作品、絵画などとの比較も通して、フランドル民族意識の特質の解明を試みた。 4 19世紀のロマン主義から世紀末象徴主義にいたる芸術文化活動の流れをひととおり追うことができ、また他の研究プロジェクトの一環としてではあるが、現在のベルギー文化の状況についても舞台芸術政策についての調査を通して考察を深めつつある。平成14年2月と3月にはブリュッセルにおいてさらに時間をかけて現状調査と文献収集を行なう予定でもある。これらの成果を整理し、独立以来のベルギー文化アイデンティティの問題について全体としてまとめる。
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