研究概要 |
平成11年度に実施した,日本フランス語フランス文学会の会員のうち,主として中世を専門にしている研究者に対するアンケート調査の結果に基づき,平成12年度には,大手前大学(西宮市)所蔵のフランス中世写本の調査を行った。同大学の大高順雄教授の案内で,同大学が購入した2点の写本について,購入の経緯,写本の来歴について説明を聞いた。それによると,2点のうち1点は,同大学購入後,大高教授によって,その所在が学界にも紹介されているが,残りの1点については,来歴のみならず,その写本に収録されている作品についても,詳しいことが分かっていないとのことであった。平成13年度において,引き続き調査し,解明を試みたいと思っている。 創価大学の福本直之教授からは,同氏所蔵の数点の断片写本についての情報が寄せられた。そのうちの1点は「聖女カテリナ伝」の一部であり,断片写本ではあるが,貴重な写本であることが判明した。他の数点の断片写本については,今のところ未解明である。平成13年度において,引き続き解明を試みる予定である。 平成10年度,11年度と継続して研究している,慶應義塾大学の高宮利行教授所蔵の『散文トリスタン』写本については,平成12年度も究明を続けた。特に,平成12年8月にフランスに行き,パリ第8大学名誉教授のピエール・イヴ=バデル教授の指導を受けた。同教授との共同研究の結果明らかになったことも多く,それらの研究成果をまとめて,国際学術雑誌Romaniaに,2人の共同執筆で原稿を投稿した。同誌の次号(2001年6月発行予定)に掲載されることになっている。
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