本研究はフランス18世紀が生み出した最大規模の書物である『百科全書』について、近年のデジタル・メディアの目覚ましい成果を取り入れつつ、『百科全書』研究に新しい地平を切り開こうとするものである。研究の内容は以下の4つに要約される。1)思想システムの解明。2)間テクスト性の解明。3)生成過程の解明。4)影響関係の解明。 第2年目になる本年度は、1)「思想システムの解明」に関する考察をほぼ終了した。『百科全書』のシステムとは、知識の各分野を緊密な絆で結び合わせている参照大系に他ならない。また2)「間テクスト性の解明」の端緒として、『百科全書』のモデルとなった英国のチェンバーズ『サイクロピーディア』を取り上げ、慶應義塾大学が所有する貴重資料「1745年の趣意書」の分析を行い、その結果を2点のフランス語論文にまとめることができた。いずれも今年度中に刊行予定である。チェンバーズ『サイクロピーディア』の初版ではなく、第2版以後の改訂増補版がフランス『百科全書』に底本として使われたことを実証的に証明したのである。 また、平成12年度から13年度にかけてパリの高等師範学校で4回の連続講演を行い、これまでの成果を発表することになっている。
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