研究概要 |
本研究は,現代ドイツにおける社会学的コミュニケーション理論の基礎となっているコミュニケーション・モデルの抽出と分析をおこない、コミュニケーション分析における方法論的なパラダイムの転換が進んでいることをあとづける作業から研究を進めた。その結果、従来のドイツにおける社会学的コミュニケーション行為論は、理念的な目的意識に規定されているため、現代の多様なコミュニケーション現象を分析する概念装置としては、極めて限定された領域にしか有効性を持ちえないことが明かになった。それに対し、現代システム理論をもとに展開されているルーマンのコミュニケーション・システム論は、情報・伝達・理解という極めて原理的かつ中立的な選択過程から構成されているがゆえに、コミュニケーションの多様な現れ方を統一的な視点から分析し、記述可能であることが確認された。このことは、この新しいコミュニケーション・モデルおよび方法論によって現在ドイツで進められている現代社会のコミュニケーション現象分析あるいはテクスト分析に関する文献調査によっても裏付けることができ、例えば、異文化コミュニケーションにおけるダブル・コンティンジェンシーと社会システム創発の問題、現代テクスト分析における間主観性と意味転換というメタファーの問題、公共的コミュニケーションの場における合意形成と多文化主義ないし差異化の問題等の分析に、極めて有効なモデルとして機能することが検証された。
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