1.〔研究発表活動〕 本年度は研究期間の2年目にあたり、前年度に行った調査結果を基に、ドイツの田園都市運動を準備した社会改革者であるテオドール・フリッチュの思想に関する論文を発表することができた。フリッチュは第三帝国以前の最大の反ユダヤ的思想家とも言われているが、これまで日本では殆ど研究されることがなかった。よって昨年度ドイツにおける資料収集活動によりフリッチュの田園都市に関する著書を入手し、社会改革者としての側面をも含めてその思想を紹介できたことは意義のあることではないかと思われる。 2.〔調査活動〕 さらなる調査活動として、アメリカの国立国会図書館とオランダのライデン大学図書館、及びベルリンのヴァルター・シュピース資料室において資料収集活動を行った。収集の対象はドイツ最初の田園都市かつ芸術家コロニーであるヘララウに関するもので、特に日本でも近年徐々にその名を知られるようになったヴァルター・シュピースに関わる資料を多く入手することができた。昨年度から継続して行っている資料収集活動ではあるが、今年度の収穫は、アメリカの国会図書館における調査活動によってM・ミードやG・ベイトソンといったアメリカの著名な文化人類学者達とドイツ人芸術家シュピースの交友関係および後者が前者に与えた影響の大凡が把握可能になったことである。前者は世界的に著名な学者であるが、これらの思想的な関与関係についてはまだ十分には知られていない。今回入手できた資料をさらに研究することにより、今後は思想の伝播という点に関しても視点を広げて研究活動を行っていくつもりである。
|