〔活動報告書〕 1.〔研究発表活動〕 ドイツ産業革命以降の生活改革運動の歴史に関する研究実績として、これまで3編の論文を発表してきた。まず生活改革運動の様々な種類を紹介し、住宅改革運動の一形態として労働者コロニー建設の歴史を概説し、また従来の建築史研究においても触れられることのなかったドイツ独自の田園都市構想を、ヨーロッパのユートピア思想との関連において捉え、紹介してきた。研究期間の最後の年にあたる本年度は、ドイツにおける実際の田園都市建設に関する論文を執筆することができた。ドイツの田園都市は"あらゆる生活改善思想が結実する場"であったと言われているが、特にドイツ最初の田園都市となったドレスデン郊外のヘレラウは、土地改革・住宅改革運動としても画期的であったのみならず、芸術教育運動の場としてもドイツ文化史のなかで重要な位置を占めている。拙論中では特に、身体性を志向していたドイツ世紀末の潮流に沿ってヘレラウがリトミック教育を行い、代表的なドイツ表現舞踊の芸術家を輩出したこと、また意欲的な出版社が興り、外国文学や日本文学史研究の翻訳書等が出版されたこと、また全体主義が台頭するにつれ、ヘレラウ共同体の中でも自由主義と国粋主義の軋轢が生じるなど、都市建設計画が二度の大戦渦に直接影響されたことなどを取り上げ、解説することができた。これらの実績を踏まえ、今後はさらにその他の田園都市や芸術家コロニーへの運動の広がりに関しても研究を続けていくつもりである。 2.〔調査活動〕 ヘレラウが育てた芸術家の一人であるヴァルター・シュピースの伝記に関して続行している調査活動の結果は、そのうち共著としてまとめ、出版する計画である。
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