研究概要 |
本研究は,これまでほとんど分析されることのなかったドイツ語と日本語の慣用句を,対照言語学的立場から統語,語彙,テクストという様々なレベルで体系的に比較検討し,両慣用句にみられる共通点・相違点を総合的・実証的に調査・分析することを目的としている。平成11年度はまず,日独両言語の慣用句を,書籍,新聞データベース等を手がかりに可能な限り幅広く収集し,語彙,統語構造,意味,テクスト等のレベルの特徴を考慮しながらデータベース化することに主眼がおかれた。それと並行して,慣用句としての意味を成立させている要因である慣用句の構成要素の比喩的意味(phraseologisch―lexikalische Bedeutung)と慣用句の具象性(Bildlichkeit)について検討し,これらの要因がどのように関与し合ってそれぞれの慣用句としての意味が生じているかを個々の慣用句を例に分析を行い,慣用句的な意味の成立メカニズムを明らかにした。平成12年度は,平成11年度に構築された慣用句データベースをさらに拡充・発展させると同時に,両言語の慣用句を語彙・統語・意味機能という慣用句内部の構造のみならず,テクストにおける慣用句の用い方という語用論的視点を加えた様々なレベルにおいて総合的な分析検討を行う。このような分析により,両言語にみられる慣用句の対応関係を明らかにし,言語類型的,そして言語の発展過程においても大きな違いが認められる日本語とドイツ語の慣用句に認められる普遍的特徴を明らかにする予定である。本研究によって明らかにされる日独慣用句の普遍的特徴は,従来の慣用句研究においてほとんど解明されていない現状を考慮しても,慣用句の対照研究にとって意義があるといえる。
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