平成11年度は、日本においてほとんど入手不可能であった歴史・思想関係の貴重な復刻出版物、例えば、18世紀の半ばのドイツ社会を映し出している道徳週刊誌『Der Gesellige』3巻本やマイクロフィルム化された18世紀プロイセンの『宗教勅令集』(Religionsedikt)などを入手できた。また、京都大学図書館所蔵の文献についても十分とは言えないが検索することができた。 本年度は、また内地研究員として、ドイツ啓蒙主義の社会的歴史的研究方法を慶應義塾大学西洋史学科において修得することができた。研究資料と研究方法の点で、得られた実り多い成果をもとに入手文献の基礎的分析作業と研究とを進め、結果の一つを論文にまとめることができた。本年度は、日本国内にて入手可能な貴重な研究資料を収集することと研究方法に新たな視点を導入することを主要な目的としていたが、この点で所期の目的を十分に達成することができた。 研究計画の2年目にあたる平成12年度においては、さらにドイツの研究機関や研究者に、日本において入手が困難な資料の照会を行うとともに、ドイツへ出張し、コピーなどによる資料の収集計画も立てている。さらに、この機会に関連する学会・研究会へ出席し、ドイツ人研究者らとの意見交換も考慮している。これら収集資料を文学・宗教・哲学・法・政治などジャンル別に整理し、ドイツ啓蒙主義を社会の歴史と精神の展開史を踏まえ総合的に研究する。たとえば『18世紀ドイツのユダヤ人公民権の研究』など、社会と文化の双方にまたがる視点から分析・研究を試みる。18世紀ドイツ啓蒙主義が有する多様な社会・文化的性格を検証し、研究成果を順次公表していく。
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