研究概要 |
高田の実績は以下の通りである.ライプニッツは,統語論(文構造)に対する理解に足らないところが著しくあったにしても,造語による言語改新や伝統的な専門表現と方言の採用による言語再生も頭に入れながら,ドイツ語が語彙面において世界的な学問語として発展し確立していけるように,実際的で具体的な提言を行った.実際にライプニッツの死後に,この提言に沿った形でドイツ語による学問的用語が拡充ていく様子を,Takada(2001)は,ライプニッツ自身がドイツ語ではなくフランス語でしか著すことができなかった『弁神論』(De Theodicee,1710)のドイツ語訳の諸版(1720,1726,1744)を年代順に比較することによって,明らかにした.ライプニッツの提言は,後世における学問語としてのドイツ語の発展に,確かに影響力をもったのである. 渡辺の実績は以下の通りである.渡辺は,ドイツとヨーロッパにおける啓蒙思想の展開とドイツ語の歴史的発展を歴史記述の諸問題への方法論的反省も踏まえて文献学的に研究し,ライプニッツの国語論をドイツ思想史・ドイツ語史のなかで位置づけることを試みた.また,ドイツ語の新正書法導入をドイツ語史に照らして評価するため,近現代ドイツ語史研究会や阪神ドイツ文学会で研究報告とシンポジウム報告を行った.これらの成果の一部は,Watanabe(2000),渡辺(2000),渡辺(2001)に結実している.また,ライプニッツの国語論については,「ドイツ人への戒め」の下訳を完成させた.全体として思想史と言語史の関わりについての基礎研究・事例研究ができたことをもって成果としたい.
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