今年度は、ビューヒナーの研究史および時代背景についての研究を行なった。 研究史の研究では、1930年代から最近に至るまでの主要な研究書を入手し、これらを批判的に紹介しながら研究史上における自らのビューヒナー研究の位置を明らかにする作業を続けた。 時代背景の研究では、『ヴォイツェック』と『レンツ』の時代背景として、1820年代30年代のドイツとフランスの精神医学界の動向を追い、ビューヒナーとフランスの精神医学者のエスキロールとの関係を解明しようと試みた。 研究史と時代背景のこの二つの研究を、「『ヴォイツェック』と『レンツ』の研究史および時代背景」と題し、およそ400枚の資料集として一冊にまとめた。今後は、この資料集に加筆・訂正を行い出版する予定である。 また、日本独文学会ではシンポジウムのパネラーとして、「よりどころを求めてさまよう群集-ビューヒナーの『ダントンの死』から-」と題して研究発表を行なった。さらに、広島独文学会では、「レッシングの『エミーリア・ガロッティ』試論-戦略としての知力-」と題して研究発表を行い、ビューヒナーとレッシングとの文学史的関連に関する考察を公表した。
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