本研究では、ドイツ正書法改革の資料を収集し、その問題点を調査・分析した。 正書法改革は、1998年8月1日、全ての学校と官庁に正式に導入された。激しい反対を押し切っての改革であった。翌年の1999年8月1日、ドイツのメディアも新正書法を採用した。そのほぼ1年後、2000年7月26日、フラクフルト・アルゲマイネ紙(FAZ)は8月1日より旧正書法に戻ると宣言し、実行に移した。 いま、現場の経験豊かな教師でも簡単に処理できない問題が多い。ディクテーションが学校で出来ないようになったという。今日のドイツではもはやどう書いたらよいか、誰も知らない。Dudenももはや規範たりえない。FAZに続く新聞社は、いまのところ大手ではあらわれていない。ただ、新聞社や出版社はそれぞれ独自の正書法を持っていると言われる。マンハイムの国際正書法専門委員会も新正書法の矛盾点を解消するために努力すればするほど旧正書法との差がなるなるといった奇妙なかつおかしな現象が起こっている。混乱の極みである。正書法改革を強行した文相会議(各州の文相で構成)の所為だ、との声が大きくなっている。 正書法改革はもう終焉を迎えたといってもよいのかもしれない。ドイツ語を学ぶ外国人への影響も大きく、ドイツ語の国際的な地位の低下を招くといった指摘もあり、改革の現状は深刻である。
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