本研究は、インドネシアのヒンドゥー・ジャワ時代を代表する二つの歴史物語『パララトン』と『デーシャワルナナ』(通称『ナーガラクルターガマ』)の電子テキスト化と日本語への翻訳を目的とする。『パララトン』は16世紀頃に東ジャワもしくはバリにおいて成立した中期ジャワ語の散文作品であり、『デーシャワルナナ』は14世紀後半に東ジャワで成立した古ジャワ語の韻文作品である。 研究初年度にあたる1999年度には『パララトン』の電子テキスト化、2000年度には、『デーシャワルナナ』の電子テキスト化を完了し、あわせて翻訳のための資料としてインド文化の東南アジアへの伝播に関わる研究史をの収集をおこない、翻訳作業を開始した。2001年度においては、資料の収集と翻訳作業を継続した。電子テキストと翻訳の結果は近いうちに公開する予定である。 古ジャワ語文献の電子化にあたっては、ローマ字への転写方式の確立が必要である。古ジャワ語テキストのローマ字転写方式についてはすでに標準的な方式が確立しているが、この方式は特殊記号を使用しているため、電子テキストにおいては利用することができない。本研究では、サンスクリット文献の電子テキスト化において用いられている複数のローマ字転写方式を比較検討し、これらを参考にして古ジャワ語の電子入力にもっとも適切と思われるローマ字転写方式を考案した。この方式に準拠して、『パララトン』および『デーシャワルナナ』のローマ字校訂本に基づく電子テキスト化を完了した。
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