平成11年度は高知県大豊町において臨地調査を実施した。その結果、ガ行子音は語頭で有声軟口蓋破裂音であり、母音間では渡りの鼻音をともなって発音されることが分かった。この傾向は高齢者になるほど顕著であり、若年層になるに従って母音間でも有声軟口蓋破裂音になる傾向が見られた。また宮古諸島の伊良部島においても臨地調査を実施した。従来の研究では、伊良部島の伊良部・仲地両集落において、ガ行子音が母音間で声門破裂音として現れる例があるということであったが、今回の調査では従来ほとんど報告の無かったカ行子音もかなりの程度声門破裂音化することが分かった。 平成12年度は伊良部島の伊良部・仲地地区においてビデオ撮影およびDATによる録音を行った。さらに与那国島においても臨地調査を実施した。琉球方言で唯一ガ行鼻音のある方言として有名であるが、そのガ行鼻音を音韻論的に解釈するためには音節構造の性質を明らかにしなければならないことがわかった。 平成13年度は鹿児島県喜界町と枕崎市において臨地調査を実施した。喜界町ではガ行音は鼻音になるということが分かった。枕崎ではガ行音は老年層で閉鎖音になっており、鼻音は観察されなかった。 これらの諸地点の調査から日本語のガ行子音は当初鼻音性をともなっていたのが次第にその要素を失いつつある状態にあり、比較的近い将来において鼻音性が無くなってしまうであろうと予測される。 平成14年度は宮古・伊良部島の伊良部・仲地地区の方言音声をCDにして刊行した。
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