研究代表者の久保は、満州語口語(シベ語)の現地調査のデータから、音韻論に関わる部分を整理し、満州語文語との比較対照研究を行なった。満州語文語の母音調和もかなりくずれたシステムであるが、口語の調和は、さらに進化して、語幹の母音と接辞の子音の調和(母音-子音調和)、さらに、語幹の子音と接辞の子音の調和(子音調和)を要求するシステムとなっていること等、従来にない指摘を行なった。成果の一部は、研究業績に挙げた論文のほか、昨年5月の満族史研究会などでも発表している。 分担者の早田輝洋は、満州語文語で書かれた『満文金瓶梅』をデータベース化し、これを用いて満州語文語の色彩語録の研究を進めた。色彩語のうち、「赤」に関わるfulgiyan、fulahUnを中心にして、その意味を探り前者の多くが、着色した物の色の形容に使われている等の、従来にない指摘を行なった。口語との比較対照研究も視野に入れている。また、『満文金瓶梅』全百回のうち、既に訳出出版した1〜10回に続き、11〜15回を翻訳して出版した。 同じく分担者の馮蘊澤は、早田の作成になる『金瓶梅』崇禎本のデータベースを用いて、文法形態素「得」に関わる統語現象の分析を進めた。現代語との比較対照も行なっている。今後、現代山東方言との比較対照も必要になるかと思われる。 3者は、恒常的な電子メイルの交換による研究交流のほか、昨年11月に神戸松蔭女子学院、本年1月に九州大学で研究会をもち、それぞれの研究を有機的に関連させるべく勉めている。
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