研究課題/領域番号 |
11610572
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大貫 隆 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90138818)
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研究分担者 |
本村 凌二 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40147880)
水谷 智洋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10011321)
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キーワード | 黄金時代 / 性愛 / 心性 / 禁欲 / エンクラティズム / 初期修道制 / 正統主義 / グノ-シス主義 |
研究概要 |
今年度、研究分担者水谷智洋は「失われた黄金時代」というギリシア・ローマの神話と文学に広範囲に渡って認められる表象をオウィディウス『転身譜』の第一巻を中心に検討した。その結果、当初の予想通り、「黄金時代」とは人間が「無欲」で生きることができた時代であること、「欲望」も「禁欲」も人類がその後の「銀の時代」以降堕落を深めて行った段階の事態であることが明らかになった。研究分担者本村凌二は共和制から帝制に移行する時代におけるローマ人の性愛をめぐる心性一般が、心や魂など「内なる世界」を見つめる方向へ偏向し、それを制約し貶める肉体を悪の原理とする見方を深めていたことを、すでに蓄積していた個別論考を基にさらに発展させ著書『ローマ人の愛と性』に上梓した。研究代表者大貫隆は後2-4世紀に焦点を絞って、多くの外典使徒行伝からエンクラティズムの性倫理(「禁欲の闘技者」)、聖アントニオスとパコミオスに代表されるエジプトの初期修道制の禁欲の神学(「この世を神と和解させるための禁欲」)、新約聖書の牧会書簡・合同書簡と使徒教父文書から正統主義の性倫理(慎ましい夫婦生活)をそれぞれ析出し、すでに平成8-9年度の科学研究費成果報告の中でも明らかにしたグノ-シス主義の「世界を破滅させるための禁欲」と比較した。その一応の結果が著書(論文集)『グノ-シス考』に収録されている。大貫が今年度に計画していた東地中海世界の修道院の現地調査はこの3月から4月にかけて実行する予定である。
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