研究の2年目に当たる本年は、昨年ロシアで収集した18世紀ロシアにおけるイソップ翻訳と、一連の寓話作家たちの作品の比較分析を行った。ロシアの寓話は19世紀になってからも姿形をかえて、巨匠たちの作中に組み込まれるが、これについては本年9月にペテルブルグのロシア文学研究所主催の国際会議で発表する予定である。 一方日本におけるイソップの受容については、渡辺温とならんできわめて早い時期に英語から翻訳した福沢英之助のものを分析している。ただし原典が不明のため研究には一定の制約があるが、ロシアとは違って、もっぱら「童蒙子女」の道徳教育教材として翻訳したのか(他の訳者たちにも共通する)に焦点を絞った考察を行っている。イソップ寓話だけでなく、明治期に嵯峨の屋お室、昇曙夢らによって日本に紹介されたクルイロフの寓話との比較も研究の対象としている。
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