平成13年度は研究課題に関連する研究として、以下のことを行った。 1)これまで収集した資料等の整理と検討、分類。これには、自分が科研費を受ける以前に行い、あちこち散逸していたものも入る。 2)研究の過程で、イソップ寓話そのものからの一次的受容から、さらに二次的な受容関係までも視野に入れなければならないことを痛感し、ロシアと日本におけるクルイロフ寓話の影響関係を調べた。日本関係では昇曙夢、嵯峨の屋お室の訳業を検討した。またロシア関係では古典的作家たちに対する影響の具体的な様相を、文学史的観点から考察した。 3)本年度8月末、サンクト・ペテルブルグの科学アカデミー・ロシア文学研究所(プーシキン館)で開催された「トルストイかドストエフスキーか」と題する国際会議に招かれたことを受け、散文小説という19世ロシアにおける新しい文学ジャンルの成立過程において寓話という18世紀に最盛期を終えたジャンルが、二大巨匠の初期作誕生にどのような役割を果たしたかについて、研究報告を行った。このような観点に立った研究はロシアではこれまであまりされたことがなく、重要な指摘だとして高い評価を受けた。この会議への渡航には科研費の「外国旅費」を活用した。 4)今年度は科研費交付の最終年度にあたるため、過去三年間に得られた成果を、「研究実績報告」としてまとめ、期限内の完成を目指している。
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