研究概要 |
八月と三月の二回、モスクワのトルストイ博物館付属資料室にて資料閲覧・収集を行った。その際、世界文学研究所リディア・オプリスカヤ教授および国立人文大学宗教学科ニコライ・シャブーロフ教授らに指導を受け、研究成果を議論する機会をもった。国内にも二度、出張し、日本ロシア語情報図書館・東京大学図書館・都立中央図書館などで資料閲覧・収集をした。また、設備費を用いて、レフ・トルストイや分離派に関する図書・資料を購入、研究した。インターネット経由での情報・資料も行った。トルストイの分離派との関係を年表にし、索引・データ・ベース化した。その結果、今まであまり深いかかわりはないとされていたトルストイと分離派および分離派の思想の間に、彼の作品の理解に大きな意味を持つ、つながりがあることが次第に明らかになりつつある。これはおもにトルストイの禁欲主義思想にかかわるものであり、分離派の思想の影響が後期の倫理的な諸作品に見られることを、歴史的・思想的を跡づけることができた。この研究成果は研究発表に挙げた書評「柳富子『トルストイと日本』」にも取り込まれているほか、現在、アメリカの雑誌(AATSEEL[アメリカスラブ・東欧研究学会紀要])に投稿・審査中の論文"Tolstoy,Attla,and Edison:The Triangular Construction of Identity of a"Peace Loving"Russian Across the Borders"に反映されている。
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